あなたは「フランツ・マルク」というドイツの画家をご存知ですか?
ドイツ表現主義のグループ『青騎士』の中心メンバーで、現代アートに大きな影響を与えた人物です。
動物をモチーフにした絵を多く残したことから、
と言われています。
そこで今回は、そんなフランツ・マルクが描く犬の作品をご紹介します!
犬の作品でアートを学びましょう!
フランツ・マルクってどんな人?
名前 | フランツ・マルク(Franz Marc) |
生没年 | 1880年 – 1916年 |
学校 | ミュンヘン美術院 |
影響を受けた画家 | フィンセント・ファン・ゴッホ ワシリー・カンディンスキー ロベルト・ドローネー |
代表作 | 『黄色い牛』(1911) 『小さな青い馬』(1911) 『虎』(1912) |
20世紀初期のドイツの画家。
動物に触れあったことから人生が変わり、自分自身を動物に投影した作品を多く残します。
しかし、第一次世界大戦に出征したことでわずか36歳の若さで戦死しました。
そのため、画家としての活動は10年に過ぎません。
画風は、色彩にあふれた作品が特徴的。
他のアーティストからの影響も多く、「キュビスム」「抽象主義」「ドイツ表現主義」「ポスト印象派」などのあらゆる表現方法がみられます。
代表作品
作品名 | 虎(Tiger) |
製作年 | 1912年 |
所蔵 | レンバッハハウス美術館 |
サイズ | 111 x 111.5 cm |
作品名 | 黄色い牛(Yellow Cow) |
製作年 | 1911年 |
所蔵 | グッゲンハイム美術館 |
サイズ | 140.5 x 189.2 cm |
フランツマルクの犬作品
飛ぶ犬シュリック(Jumping Dog Schlick)
作品名 | 飛ぶ犬シュリック(Jumping Dog Schlick) |
製作年 | 1908年 |
所蔵 | レンバッハハウス美術館 |
サイズ | 54.61 x 67.31 cm |
元気に遊ぶシュナウザー。
タイトルのSchlickは、おそらく犬の名前です。
フランツ・マルクは1903年から1907年にゴッホの絵に触れたことから、生き生きとした動物を描くようになります。
この作品もその一つ。
同時期に初期の傑作『黄色い牛』(1911)が描かれました。
こちらに飛び出てきそうな躍動感は、ポスト印象派にみられる表現方法です。
横たわる犬(Lying Dog)
作品名 | 横たわる犬(Lying Dog) |
制作年 | 1909年 |
所蔵 | – |
サイズ | 66 x 81 cm |
マットの上に横たわる犬。
マルクは表現主義でもあるので、このころは落ち着いた日々を過ごしていたのではないでしょうか。
犬の毛の束間とマットの束間がいいですね。
シベリアのシープドッグたち(Siberian Sheepdogs)
作品名 | シベリアのシープドッグたち(Siberian Sheepdogs) |
製作年 | 1910年 |
所蔵 | – |
サイズ | 80.33 x 113.98 cm |
シベリアのシープドッグたち。
この絵にもポスト印象派の表現方法が表れています。
例えば、「雪の白」と「犬の毛の白」の質感の違いや、歩くことによって揺れた毛の感じ。
光、ゆらぎが上手い塩梅で描かれています。
横たわるルーシー(‘Russi’ Lying)
作品名 | 横たわるルーシー(‘Russi’ Lying) |
製作年 | 1910-1911年 |
所蔵 | – |
サイズ | – |
寝ている犬ルーシー。
マルクが飼っていた犬シベリアンシェパードをモチーフにした絵です。
この絵も同様、ポスト印象派の表現がみられます。
雪の上に横たわる犬(Dog Lying in the Snow)
作品名 | 雪の上に横たわる犬(Dog Lying in the Snow) |
製作年 | 1910年 |
所蔵 | シュテーデル美術研究所 |
サイズ | 62.5 x 105 cm |
雪の上に横たわる角張った犬。実はこの犬もルーシー。
マルクは1909年にワシリー・カンディンスキーに出会ったことから、抽象絵画の影響をうけます。
角張った輪郭にその影響が少しみられます。
同じモチーフでも、描き方によってかなり違う印象を受けますね。
具体的な対象をかきうつすことのない絵画。
雨の中(In The Rain)
作品名 | 雨の中(In The Rain) |
製作年 | 1912年 |
所蔵 | レンバッハハウス美術館 |
サイズ | 81.5 x 106cm |
雨の中に隠れるのは白い犬。
左上と真ん中上のほうに女性の顔のようなものが描かれている気がします。
『虎』(1912)の絵や雪の上に横たわる犬と同様、キュビスムの傾向がでています。
いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収める手法。
白い犬(The white dog)
作品名 | 白い犬(The white dog) |
制作年 | 1912年 |
所蔵 | 個人 |
サイズ | 111 × 83 cm |
世界を前にする犬(Dog In Front Of The World)という名前でも有名な作品。
『風景の中の馬』(1905)の作品と同じ雰囲気を感じます。
この犬は遠い世界を見ているようです。
犬(A Dog)
作品名 | 犬(A Dog) |
製作年 | 1912年 |
所蔵 | – |
サイズ | 80 x 105 cm |
キツネと猫と犬。
マルクは、色には下のようにそれぞれ象徴的なイメージがあると考えています。
- 「赤」→物理・暴力
- 「黄」→女性的・優しさ・官能的
- 「青」→男性的・精神的
この作品では3匹の動物が登場し、
- 「犬」→赤
- 「猫」→黄
- 「キツネ」→青
をまとっています。
遊ぶ犬たち(Playing Dogs)
作品名 | 遊ぶ犬たち(Playing Dogs) |
製作年 | 1912年 |
所蔵 | – |
サイズ | 38.1 x 54.61 cm |
色彩にあふれたグレイハウンドのような犬たち。
こういった鮮やかで力強い色使いは、1912年に出会ったロバート・ドローネの影響によるものです。
同じ動物でも作品によって配色が異なります。
馬と犬(Horse and dog)
作品名 | 馬と犬(Horse and dog) |
制作年 | 1913年 |
所蔵 | ブッシュ・ライジンガー美術館 |
サイズ |
仲良さそう馬と犬。
他方面からものごとを捉えて描くキュビズムの手法を用いています。
ピカソの絵と似ていると思いませんか?
ただし、シンプルさや感情を色にのせる表現方法はマルクらしさがでています。
さいごに
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